できれば非破壊で評価・診断

 機械や建物といった構造物では、設計通りにできているか、不良や故障、劣化はないか、あった場合に寿命にどれくらい影響するか、といったことが重要になります。こうした事柄は構造物の検査、評価、診断と呼ばれ、ものづくりの現場では避けて通れないテーマです。

 特に、小さなきずや内部の異常は一目ではわかりません。大量生産された製品で少しくらい壊しても良ければ、いくつか持ち出してバラバラにし、中身を見る方法があります。しかし、大きな構造物はバラバラにするわけにはいかないのが普通です。大量生産されている構造物だって、検査のために壊す数は少ない方が良いでしょう。というより、一つも破壊したくないでしょう。そのため、非破壊で構造物を検査、評価、診断する方法が求められています。

超音波パルスを用いた非破壊評価

 構造物を破壊することなく異常を見つけて評価する方法は色々あります。見つけたい異常の種類にもよりますが、目視や画像処理による方法、温度分布を使う方法、電気を流してみる方法、叩いて音を聴く方法などなど……。この中で、私達は主に超音波を使う方法について研究しています(と言ってはみるものの、超音波だけにこだわるつもりもありません。目的に応じて適切な方法を使うべきだと思っています。)

 超音波を使った非破壊評価の代表的な方法は、図1のような超音波パルスを使う方法です。超音波パルスは人間には聞こえない高い音で、かつ、短時間だけ存在するような信号です。これを超音波探触子(超音波プローブ、超音波トランスデューサとも呼ばれます)というスピーカー兼マイクのような装置から送信し、それをまた超音波探触子で受信します。送信された超音波パルスは構造物の中を音速で進んでいき、通り抜けたり、端のところで反射したりします。

図1 超音波パルスを用いた非破壊評価の模式図

 このとき、超音波パルスが進んでいく途中に異常部があると、超音波パルスが変化します。異常部で反射すれば、この反射した波を受信することで異常があるとわかります。また、異常部を通り抜けた超音波パルスの強さが変われば、やはりこの通り抜けた波を受信することで異常があるかどうか調べられます。前者は反射波を使った評価、後者は透過波を使った評価に分類されます。

非破壊評価の理想と現実

 超音波パルスの反射波や透過波を使えば、構造物の中にある異常を見つけられそうです。実際に、この方法は広く利用されています。ですが、この方法では見つけにくい異常もあります。

 例えば、図2のように異常部が表面のすぐ近くにあって、しかも小さい場合です。このような異常部に大きな超音波探触子で超音波を送信すると、表面からの反射波と異常部からの反射波が混ざって受信されます。複数の波が混ざることを干渉すると言い、混ざった波のことを干渉波と言います。この場合は受信波が干渉波になっているのですが、異常の影響は干渉する前の一部にすぎません。そのため、干渉波である受信波を見ても、異常部があるかどうかがわかりにくくなっています。

図2 正常部からの反射波と異常部からの反射波が干渉する例

 異常部は大抵小さいものですし、構造物の表面は色々な物質に接してダメージを受けるため、異常部は表面の近くに発生しがちです。したがって、図2のような非破壊評価の難しい場面はしばしば現れます。私達はこうした「ありがちだけれども見つけにくい異常」を検出し、評価できる手法の開発を目指しています。